2. 出会い

 

 一本目のダイブを終え、セレスティンは船のデッキの上でウェットスーツを脱ぎ、タオルで体を乾かした。水で冷えた体に太陽が心地いい。

 クルーが飲み物とサンドイッチを配って回る。一時間ほどの昼休みだ。

 他のダイバーたちはコーラを飲み、サンドイッチをかじりながら、さっきのダイブで見た魚の種類や、今夜のアメリカン・フットボールの試合のことなど、とりとめもない会話に興じている。

 にぎやかな会話から離れるようにして一人、海を見つめている男性がいるのにセレスティンは目をとめた。

 ウェットスーツの上半身を脱ぎ、肩幅の広い引き締まった体を風にさらしている。グレーのデザインのスーツから、それが先ほどのダイブで海底から自分とウミガメを見上げていた単独[ソロ]のダイバーだと気づく。

 セレスティンの視線に気づいたように、男性がこちらを見る。灰金色[アッシュブロンド]の髪が風に揺れ、その視線はほんの一瞬セレスティンの上に止まり、すぐにまた海の方に戻された。

 その短い一瞥の中に、セレスティンは青い星の光のような輝きを見たと思った。

 何が光ったのだろう。そう思い返したが、はっきり何と思い出すことができなかった。

 生物学専攻で自然観察の好きなセレスティンは、野外で素早く動くものや現象の色かたちを目で捕らえるのが得意だった。

 だが、たった今、自分の目に映ったのが何だったのか、わからなかった。
海に反射した太陽の光か、その残像だったのか。

 男性の視線の先を追うように、海に目をやる。深い青色の海はゆるやかに波立ち、陽の光を反射する。

 なぜ突然、カウアイ島に来なければならないと思ったのだろう。

 確かにハワイの他のどの島よりも、この島の海は好きだった。

 でもここでの滞在は、オアフ島住まいの学生の身には少しばかり高くつく。だから次に戻ってくるのは、越冬のためにこの海域を訪れるザトウクジラの歌が聞こえる二月と決めていた。

 それなのに一週間前、まるで海に呼ばれるように突然の思いつきに捕らわれると、いてもたってもいられなかった。
でもダイビングの二日目になっても、自分を駆り立てたはずの理由は見つからなかった。

 見つけなければいけないものがある、胸の中でそう声がした。
それはこの半年、いや、それよりも前から自分の中で繰り返されてきた声だった。

 今度こそはそれが、自分が探している何かが見つかるかもしれない、そう思ったのに……。

 

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