小説らしいものを書き始めた頃


 ワシントンDCで働いていた頃、よくダウンタウンの地下のフードコートで書き物をした。

 近隣のオフィスビルで働く、ぱりっとしたスーツ姿の官僚や政治スタッフと、あらゆる国からの出稼ぎ移民が渾然と空間を共有するあの雑踏。今でもとても懐かしい。

 あの頃は仕事の合間に時間を盗んで、『独立州クロニクル』の原形になるものを書いていた。