9. 前へ

 窓から入る風が湿気を帯びる。テロンは空を見た。
 暮れかかった空から雨粒が落ち始める。冬のオアフのスコールは、まるでバケツをぶちまけるような激しさで空から水が落ちてくる。
 これも1時間もすれば止んで、その後には星空が広がるのだろう。
 星空……か。
 窓を閉め、ベッドの上に体を投げる。
 ちょっとばかり厄介になってきたな。
 自分の態度は最初から決めていた。だがあいつの方で勘づいて食いついてくるとなると、それをかわすのは面倒だ。
 見捨てるつもりなぞもちろんない。だが適当なところで距離は維持しなけりゃならない。
 閉めた窓を通しても聞こえる激しい雨音。
 いっそエステラでもいてくれれば……そうすれば全部、押しつけられる。
 もっとも、まがりなりにも伝統のある白魔術教団[オルド]の幹部が、セレスティンのような小娘の子守を引き受けるわけもないんだが……。
 そう考えかけて、以前、エステラに電話した時のやりとりを思い出した。
 エステラは、「テロンとルシアスのそばにいる若い女性」としてセレスティンの存在を感じとっていた。そして「その娘[こ]から目を離さないで」と――。
 つまりセレスティンも、布置[コンステレーション]の一部だ。切り離すことはできない。
 それも状況は少しきな臭い。
 エステラは「これ以上質問するな、質問すればもっと情報が流れ込んで来て、自分の行動に変化が起きる」と言った。そしてそれは避けたいと。
 テロンは複数の可能性をリストしてみたが、考えられるのは
いずれも教団[オルド]との関係にまつわるものだった。
 まだあいつらとの腐れ縁は切れないのか……。


(続く)